初めまして。
株式会社Sunset filmsの林です!
以前私はこちらの記事の撮影のために小島屋旅館さんにお邪魔させていただいたことがありました。
旅館に近づいていくと当時とは違う光景と香りに驚きました!
磯部温泉街に、温泉の湯けむりに混じって香ばしいパンの焼ける香りが漂っている。
香りの元を辿り行き着いたのは4年前に取材させていただいた、あの小島屋旅館の一階。
そこには昭和レトロな雰囲気漂う「やどパン」のロゴ看板。
窓から工房を覗くと、慣れた手つきでパン生地を切り分けるは、旅館の4代目女将・原田三重子さん!!
いろいろ気になりすぎて、お話を伺ってきました!
旅館とパン屋、二足のわらじ
──ご無沙汰しております、、!
前回インタビューと撮影をさせていただいてから早3年ということで、まずは原田さんのこれまでのパン遍歴を辿っていきたいと思います。
原田さん:
前回の記事(「パン職人」だった女性が「磯部最古の旅館の女将」を継ぐまで)をご覧の方はご存知かと思いますが、元より結婚するまではずっとパン屋さんに勤めていました。
──最初はパンの販売員として働かれつつも、昔から好きだったパン作りに携わりたくなり、意を決してパン職人になったと伺いました!
原田さん:そうそう。それから結婚を機に退職した後も、同じくパン職人の夫とお店を開こうかと考えたくらいパン作りは好きでしたね。
まだ子どもが小さかったこともあり、その時は開業を断念しましたが、趣味ではずーっとパン作りを続けていました。
──その頃から自分のお店を持ちたいと思われていたんですね。
原田さん:そうなんです。
でもそのうちに、それまで旅館を切り盛りしていた母と叔母が続くように亡くなり、私が突如経営を引き継ぐこととなったんです。
幸いにも現在に至るまで多くの方々に恵まれて24年旅館を続けてこられました。
──旅館の女将になって24年になるのですね。
では、この度パン屋さんを開こうと思われたきっかけは??
原田さん:このまま旅館を営んでいても特段困ることはありませんでした。
契機となったのはやっぱり新型コロナウイルスの流行によって一時的にお客さんが減少した時かな。
さあこれから先旅館1本でどうなのかな、、と思った時に、またパンをやってみたいなっていう気持ちが頭をもたげてきたんです。
とは言っても現実には設備の導入などに資金がかかるので半分諦めていました。
そんな時に、安中市の商工会の方から事業再構築補助金の存在を教えてもらって、三度目のチャレンジで申請が通りました。
──2度申請に落ちても諦めずに挑戦されたのですね!
原田さん:そうそう。
落ちたらもう絶対受かりたいって思っちゃて(笑)。
今度また通ったら通ったで大変で、具体的に内装や導入機械を1つ1つ決めながら、2月16日にめでたくオープンさせることができました。
──原田さんの推進力には毎度驚かされます!デパートで働いていた時と比べて違いはありますか?
原田さん:デパートでパン作りしていた時も楽しかったのですが、やはり自分のお店は気持ちの入り方が違いますね。
自分の作ったパンをお客さんに手渡しできるので、お客様の反応を直に感じられる点はすごく面白いです。
今後も多種多様なお客さんの好みに対応できるよう、新作を定期的に考案していきたいです。
──お客さんの声を直に聞いてすぐに取り入れられるのは個人商店ならでは強みですね。
45年前と変わらぬ製法で作るオリジナルパン
──ぜひイチオシのメニューを教えてください!
原田さん:パンは多い時は20種類ほど作っているのですが、中でも信州の郷土料理である「おやき」をパン生地で作った、「おやきパン」がイチオシです。
生地には試行錯誤の末、全粒粉を使った湯種製法(小麦粉の一部に熱湯を加えてこね、一晩寝かせた生地を作る製法)でもちもち感を出しています。
中に入れる具材の種類は野沢菜ときんぴら、つぶあん、黒ごまあん、不定期でかぼちゃ、さつまいもあんがあります。
温泉と焼きたてパンの温かいイメージを模ったお店のロゴを焼印したイチオシパンです。
──おやきパン!今から食べるのがとっても楽しみです!
あと個人的には「バンズパン」が気になりました!もしかして、群馬県民に馴染み深いあのパンですか?
原田さん:そうそう!
全国的にはバンズって言ったらハンバーガーの丸いパンのことを言うのですよね。
実はバンズパンは高崎のソウルフードと呼ばれていて、今はもうないかもしれないけど、私の世代は学校の給食にもよく出ていたパンなんです!
甘い生地の丸いパンの真ん中にナイフを入れて、ガバッと開けた内側にシンプルにマーガリンを塗っています。
やっぱり懐かしくてパン屋さんを始めるにあたって再現してみたかったんです。
――私(31歳)も給食で食べていました!懐かしの味をまたここで食べられるなんて嬉しいです!
ところで、旅館のお客さんにもパンは提供していますか?
原田さん:旅館のお食事としては基本的に出してはいないのですが、朝5時からパンを焼き出すと、2階へ続く階段が煙突となってパンの香りがお客様の元まで届くようで、、
狙っていたわけではないのですが、ありがたいことに皆さん買わずにはいられなくなってしまうようです(笑)!朝風呂の帰りに工房を覗いて、お帰りになるときにお土産用に買ってくださる方も多いです。
皆で助け合いながら旅館もパン屋も一所懸命
──パン屋さんをやっていく上で大切にしていることはありますか?
原田さん:“真面目に一所懸命おいしいパンを作ること”かな。
やっぱり旅館の片手間にパンを作っていてはお客さんに失礼に当たるし、そう思われたくないです。
旅館もパン屋さんも両輪で一所懸命やることが、それぞれのお客さんに対する礼儀だと思っています。
──パン屋さんをオープンさせた今の思いを最後にお聞かせください。
原田さん:様々な巡り合わせが重なり、安中の商工会さんや温泉組合の方々など、多くの協力を得てパンを作ることができていると思っています。
実はスタッフは全員60歳以上で、それぞれ色々な繋がりで旅館を手伝ってくれているメンバーが、一からパン作りを学んでくれました。
主婦ですからね、結構飲み込みが早く手際もいいですし(笑)、
私1人じゃ本当にできないことなので、大変ありがたいです。
(いいこと言ってくれるじゃん!!との声が工房に響く(笑))
これからも個性豊かなメンバーと、それぞれの良いところを発揮して、苦手なところは補い合いながら、ボケ防止も兼ねて皆で楽しく働けていけたらいいなと思います。
やどパン情報
営業時間/10:00〜売り切れまで
定休日/水曜日・土曜日
駐車場/8台
〒379-0127
群馬県安中市磯部1丁目13-22
TEL/027-385-6534(小島屋旅館内)
ホームページ:https://yadopan.com/
instagram:https://www.instagram.com/yadopan_kojimaya/